師崎層群の棘皮動物

ウニ・ヒトデ・クモヒトデ・ウミユリ・ナマコは一つの大きなグループ、棘皮動物門にまとめられています。
 棘皮動物の特徴は、石灰質の小板を柔かな組織で結合させ体を作っています。この石灰質の小板に棘を持っていることがあります。柔らかい組織は"キャッチ結合組織"と呼ばれ、硬さの変わる組織で、ナマコに刺激を与えたときに硬くなったりしたり、クモヒトデの腕の自切するときの組織です。この組織は管足とともに棘皮動物の特徴となっています。この組織のために棘皮動物は、死後体がバラバラになりやすい傾向があります。また、体の体制が他の動物が持つ左右対称ではなく、中心の軸のまわりに五つの同一構造が放射状に配列した五放射相称の体制を持つのも特徴です。
 師崎層群からは多くの棘皮動物化石が見つかっています。その多くは不正形ウニのタヌキブンブク(Brissopsis sp.)の仲間が多いですが、新生代には珍しいウミユリ類や深海性のヒトデ類も発見されました。

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ヒトデ類(Asteroidea)
 ヒトデは、中央の五角形をした体(盤)から5本の太い腕が放射状に出ています。口は下にあります。

モミジガイ科の一種 (Astropectinidae)
産地:知多郡美浜町野間
体全体が保存された標本で、骨格部分は溶けています。

ゴカクヒトデ科(Goniasteridae)アンセノイデス属の一種(Anthenoides sp.)
産地: 知多郡南知多町岩屋
骨格が保存されています。腹部の骨格が残っていますが縁板は断面になっています。

ホシガタヒトデ科(Zoroasteridae)ドラスター・ミズノイ(Doraster mizunoi)
産地: 知多郡南知多町岩屋
新種として記載されました。近縁な現生種は西大西洋に生息しています。

ブリシンガ科(Brisingidae)ヒメノディスカス属の一種(Hymenodiscus sp.)
産地: 知多郡南知多町山海
9本の腕を持つヒトデの仲間で、中心部に円状の盤が有ります。現生種は漸深海帯から深海帯に(200m−1000m)に生息しています。 

クモヒトデ類(Ophiuroidea)

トゲナガクモヒトデ科(Ophiacanthidae)の一種
産地: 知多郡南知多町岩屋
中心部の盤は丸く、表面に細かい棘があります。


オオクモヒトデ亜科(Ophiarachnae)の一種(Ophiarachna sp.)
産地: 知多郡南知多町大泊
盤は五角形で大型の標本です。

クモヒトデ科ニホンクモヒトデ亜科(Ophiolepidinae)の一種(Stegophiura sp.)
産地: 知多郡南知多町大泊
盤は五角形で大型の標本です。


クモヒトデ科ニホンクモヒトデ亜科(Ophiolepidinae)の一種(Ophiomusium sp.)
産地:知多郡南知多町豊浜


ウニ類(Echinoidea)

フクロウ二科ナマハゲフクロウニ属の一種(Phormosoma cf. bursarium
殻が柔らかくシート状となっています。間歩帯には棘の付く大きな疣があります。現生種は1500m以深の深海底に生息しています。
ナマハゲフクロウニの現生種


サンショウウニ属の一種(Temnopleurus sp.)
正形ウニで、歩帯や間歩帯の比、歩帯の孔対の位置などから判断されました。両標本とも口面側です。


反口面 口面
反口面 タヌキブンブクの現生種
タヌキブンブク属の一種(Brissopsis sp.)
不正形ウニの一種で、師崎層群から最も多く見つかる棘皮動物。以前はリンシア ニッポニカとされていましたが、研究の結果タヌキブンブクの一種と判明しました。

ウミユリ類(Crinoidea)

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ゴカクウミユリ科 Teliocrinus springeri
ウミユリ類は有柄ウミユリ類とウミシダ類に分かれますが、師崎層群からは有柄ウミユリ類が見つかっています。古生代には多くの種類が生息していましたが、新生代になると化石の発見は極めて珍しくなります。日本近海にはトリノアシ(Metacrinus)など14種が知られています。現生のTeliocrinus類はインド洋に生息しています。