どんな恐竜だって、卵から生まれてくる。だが、そのころ世間の恐竜卵への注目度は低かった。そこで私は、中国・アルゼンチン・丹波・フランスと、世界の恐竜たちの卵(生命のカプセル)の里をたずねることにした。恐竜誕生の跡をめぐる旅のつもりだったが、必ずしも、おめでたい現場とは限らない。むしろ、同じ巣の卵でも、洪水に埋もれて化石化した卵がほとんど! まれに、嵐が来る前に孵化して、ピヨピヨッと誕生のよろこびをさえずる恐竜の赤ちゃんがいればラッキーだ。つねに、生と死のはざまで揺れている旅だった。作家・五木寛之さんの言葉を借りれば、「生まれなかった赤ん坊の叫び」に耳を傾けるほうが多かったと思う。
この旅で出会った研究者たちは、名探偵さながらに卵の謎を解いてゆく。豊富な卵化石をCTスキャンして、「卵の中の赤ちゃんは、まず頭蓋骨から最初に発達する」と結論づける研究者もいれば、小さな卵の殻の切断面を顕微鏡でのぞき、どの恐竜の卵か探り当てる研究者もいた。直径約3メートルの巣は、体長8メートルのオヴィラプトロサウルス類の巣で、卵の色は深緑(ふかみどり)だった……などなど。そんな謎解きミステリーの旅へ、みなさんを誘(いざな)う渾身(こんしん)の取材記。
※誠文堂新光社の販売部( 03-5800-5780)や、最寄りの書店でお求めになることもできますが、Amazonなどでネット販売もいたしております。くわしくは、ウェブで!
長尾衣里子
『恐竜の卵の里をたずねて―世界の恐竜たちの生命(いのち)のカプセル―』
長尾衣里子 著 (誠文堂新光社)/A5判80P/定価1,000円+税